あまり考えたくないことですが、結婚されている方はもし夫が亡くなった場合、妻が働いていても遺族年金を受取れるってご存知でしたか?
しかも、籍を入れていない事実婚の方も遺族年金は受取れるのです。
こんにちは。
三世代充実生活研究所所長の髙橋佳良子です。
シングルの方の年金受取額のめやすは、~第2回 それで、年金はいくらもらえるの?~でご確認いただけます。
国民年金または厚生年金保険の被保険者だった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。遺族年金には、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、亡くなった方の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。
では、万一夫が亡くなったら、どんな遺族年金をいくら位受取れるのでしょうか。
まずは、夫が加入している年金制度を確認して、どんな遺族年金が受取れるのかを見てみましょう。
どんな遺族年金が受取れるのか
夫の職業と年金制度 | 遺族年金など 対象者 |
支給される 遺族年金など |
---|---|---|
自営業 国民年金加入者 |
18歳以下のお子さんがいる妻 |
遺族基礎年金 |
お子さんのいない妻 | 死亡一時金か寡婦年金 | |
会社員や公務員 厚生年金加入者 |
18歳以下のお子さんがいる妻 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 |
お子さんのいない妻(40歳未満) |
遺族厚生年金 | |
お子さんのいない妻(40~65歳未満) | 遺族厚生年金+中高齢寡婦加算 |
- ※お子さんとは、18歳の年度末(高校を卒業する3月31日をイメージ)または20歳未満で障がい等級1級・2級の状態にあり、いずれも婚姻していない子をいいます。
- ※お子さんは、原則18歳の年度末まで遺族基礎年金を受取れます。「お子さんのいない妻」とは、18歳以下のお子さんがいない方のことです。つまりすでに20歳のお子さんだったら、遺族年金の対象にならないので「お子さんのいない妻」になります。
ただし、以下に注意です!!
- ●奥さまの年収が850万円以上あり、それが概ね5年以上続くと認められる場合は受取れません。
- ●亡くなった夫の年金保険料が、支払いが必要な期間の3分の1を超えて未納のときは受取れません(ただし、直近1年間納めていれば受取れます)。
今回は夫が亡くなった場合のお話をしていますが、共働きで妻が亡くなった場合は、以下を参考にしてみてください。
妻が亡くなった場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金がもらえる条件は以下の通りです。
年金の種類 | お子さんがいる | お子さんがいない |
---|---|---|
遺族基礎年金 | ○ | × |
遺族厚生年金 | お子さんが受取る | 夫の年齢が55歳以上 |
- ※「中高齢寡婦加算」は、夫を亡くした40歳以上の妻だけが受取れるので、夫には支給されません。
では、次にいくら位受取れるか見てみましょう!
例:会社員の夫(平均月収30万円)と会社員の妻・子ども2人(小学生と中学生)の場合
このケースで、夫が亡くなったら遺族年金の金額は「1.遺族厚生年金」と「2.遺族基礎年金」の合計額を受取れます。夫の平均月収が30万円だったとすると、遺族厚生年金から約37万円、遺族基礎年金から約123万円で、遺族年金額のめやすは合わせて年間約160万円位の想定です。
亡くなった人が会社員や公務員で、
18歳年度末までの子どもが2人いる場合の遺族年金の年金額
(単位:円)
平均月収 | 遺族厚生年金(年額) | 遺族基礎年金(年額) | 合計額(年額) |
---|---|---|---|
25万円 | 308,306 | 1,225,400 | 1,533,706 |
30万円 | 369,968 | 1,595,368 | |
35万円 | 431,629 | 1,657,029 | |
40万円 | 493,290 |
1,718,690 | |
45万円 | 554,951 | 1,780,351 |
★遺族厚生年金の計算式
{ [平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入月数]+[平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数] }×3/4
- ●厚生年金保険の加入期間は全期間2003年4月以降300月、平均月収は平均標準報酬額にボーナスを含まないとして計算。
- ●妻が40歳未満の場合で計算。
- ●遺族基礎年金は18歳年度末までの子どもが2人の場合で計算。
- ※上記はあくまでめやす額です。
最後に65歳以降の遺族年金を見てみましよう。
老後に受取る遺族年金は以下のようになります。
専業主婦だと夫の遺族年金をそのまま受取れますが、社会保険に加入して働いていた妻の場合には自分にも老齢厚生年金があるので、夫が亡くなっても遺族年金をあきらめるケースが多いようです。また、離婚してしまうと遺族年金を受取る権利はなくなります。
- ●夫の遺族年金の方が妻自身の老齢厚生年金より多い→自分の老齢厚生年金+夫の遺族年金の一部
- ●夫の遺族年金が妻の老齢厚生年金より少ない→夫の遺族年金は受取れません
さて、次は離婚した場合に老後に受取れるかもしれない公的年金の年金分割についてのお話しです。
年金分割制度とは、夫婦が離婚する際に、将来的に受取れる「厚生年金」を当事者同士で分割できる制度で、元配偶者(例えば元夫)が会社員や公務員などの「第2号被保険者」である場合にのみ、年金分割制度が利用できます。年金分割制度の種類は2つあります。
- ●合意分割制度とは・・・
- 婚姻期間中に納めた厚生年金の「標準報酬」部分を、最大で2分の1にまで分割できる制度です。2007年4月1日以降に離婚等をし、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること、当事者の合意または裁判手続きにより按分割合を定めること、請求期限を経過していないこと(原則として離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)の条件があります。
- ●3号分割制度とは・・・
- 2008年5月1日以降に離婚等をし、同年4月1日以降に国民年金の第3号被保険者期間があること、請求期限を経過していないこと(原則として離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)などの条件に該当する国民年金の「第3号被保険者」が請求すると、当事者の合意なしで最大2分の1にまで年金分割ができる制度です。
ただし、3号分割制度で年金分割ができるのは「2008年4月1日以降の婚姻期間中に、第3号被保険者(例えば元妻)であった期間における元夫の厚生年金記録」のみです。
いずれも、年金の全額を分割して受取るわけではありません。詳細を知りたい方は、日本年金機構の電話相談(ねんきんダイヤル)やお住まいの地域の年金相談センター(広島・岡山・山口)、各県の年金事務所などへ相談してください。
今回のひとこと
5分でわかる! 女性のためのマネー講座「私の老後はどうなるの?」は、今回で最終回となります。老後のお金について取り上げてきましたがいかがでしたでしょうか。
人生100年時代はどんな老後を送りたいかによって、準備するお金が異なることに気づかれたと思います。まずは、自分たちの将来のお金を知ることから始めましょう。
何歳になっても自分らしく心豊かに過ごしていきましょうね。
くらしとお金のコンサルタント
お金のことだけでなく、その人らしさや心の持ち方などの重要性に気付き2015年に三世代充実生活研究所を設立。子どもから高齢者まで各世代への相談業務やセミナー講演会の講師を務めるファイナンシャル・プランナー(以下FP)。約30年のFP経験で、2,000回以上の講演会やセミナーを実施。日々お客さまからのご相談に真摯に取組み、不安や悩みを解決しています。
- 髙橋 佳良子氏のホームページはこちら
- https://sansedai-oyakomago.jp/