MONEY

おひとりさまが準備しておきたい
これからのお金と暮らし
第3回 おひとりさまの「おねがい3点セット+遺言」 編

人生100年時代。80歳、90歳と年齢を重ねるごとに周囲の助けが必要になります。
身体的なことだけでなく、病気や認知症の進行で判断能力が下がり自分では決められないことが増えていくからです。

そんな時に備えて準備しておきたいのが
「おねがい3点セット+遺言」です。

老後に備えてお金を貯める人は多いのですが、はっきり言ってそれだけでは不十分。
それどころか、お金がたくさんあったとしても「おねがい3点セット+遺言」がなかったことで、高齢期の暮らしや相続で後悔するということが結構あります。

まず、こちらをご覧ください。

あなたに何かあった時、さまざまな手続きや身の回りの世話を頼める人がいますか?

例えば、ひとりでできなくなった時にどうしますか?

01
お金のこと

生活費のやりくり/財産管理/さまざまな支払いや手続き/相続/保険

02
住まい

高齢者施設への住み替え相談や見学の付添/持ち家の管理や処分/荷物の整理や処分

03
医療や介護

病院の付添/病状説明の同席/入院手術の立会/医療上の判断の支援/介護など各種手続き

04
身元保証人

入院手術の同意/緊急連絡先/入院や施設入所の保証人/任意後見人の受託

05
死後のこと

相続/墓じまいなどの相談/遺体の引取りから葬儀や告別式、納骨の手配/事務手続き/遺品整理

「いやいや大丈夫。兄弟姉妹や友達が多いから…」という方もいますが、兄弟姉妹、友人知人たちはあなたと同じように年を取っていきます。姪や甥とはお願いできるような関係性ができていますか?

たとえば、入院時の身元保証人は遺体を引取ってくれる人です。医療費の肩代わりだけならまだしも、遺体を引取って埋葬までしてくれる保証人を探すのは一苦労です。

こんな、心配事を解消してくれるのが「おねがい3点セット+遺言」です。

おひとりさまに役立つ
公正証書とエンディングノート

おねがい3点セットとは?

01
生前事務委任契約

判断能力はあるものの日常の手続きや管理が難しくなってきた場合の契約。
●財産管理…金融機関への入出金・年金の受取り・支払いなど
●生活・療養看護…医療・介護に関する手続き全般
●その他の生活支援…老後の人生設計や資金計画などを一緒に行う

02
任意後見制度

判断能力の低下に伴いサポートが開始される契約。任意後見人(本人の代わりに身の回りの業務を行ってくれる人)になってくれる個人または法人と契約。
●財産管理…生活資金の管理、金融機関への入出金、定期収入の受取りや支出の支払いなど
●身上監護…医療機関入退院時の手続き、住居に関する手続きなど

03
死後事務委任契約

契約者本人が亡くなった後、お葬式や納骨、遺品整理、行政機関への手続きを第三者に前もって委任する契約。
●葬儀社の手配、親族・知人への連絡、納骨など
●遺品整理…故人の遺品の整理、室内清掃・賃貸住宅の原状回復など
●未払金の清算…入居施設・医療機関への未払金、水道光熱費の支払いなど
●行政機関・民間会社などへの諸手続き…市区町村役場への各種手続き、各種契約解除

そして、遺言書。

生前お世話になった人に相続の際に御礼がしたいというような時に、被相続人(故人)が法律の定めと異なる相続の配分を生前に希望するときに作成するもの。遺言書がなければ、法定相続人が財産を受取ります。

さて、おひとりさまの最期の時にお世話になる人は、甥や姪であったり、親しい知人である場合があります。しかし、亡くなった時に遺言がなければ、疎遠であったり大っ嫌いだったかもしれない(笑)高齢の兄弟姉妹やその子たちなど民法上の法定相続人があなたの財産を均等に相続します。そのため、お世話になった方々には財産を残すことができないのです。

そこで、遺言書を作成して財産の行き場所をご自身で決めていただければと思います。お世話になる人が変わるなど状況が変われば、何度でも書き直すことができ、一番日付の新しい遺言書が正式なものとなります。

注意しましょう!!

今後ますます増えると思われるサービスとして、おひとりさまなど家族による支援を受けることが困難な高齢者を対象にした、入院・施設等入所時の身元保証、日常生活支援、死後の対応等を行う「身元保証等高齢者サポート事業」があります。

しかし、事業者の経営破綻に伴うトラブル等も発生するなど、利用者が安心できるサービス・事業者の確保が課題となっており、総務省や消費者庁、国民生活センターも注意を呼びかけています。最期の時まで何十年もの付き合いになる事業者選びには充分気を付けましょう。

髙橋佳良子

おひとりさまには、お金だけでなく人間関係の構築や各種制度の活用も不可欠。
最期まで心地よく、自分らしく過ごせるような仕組みづくりについても考えてみましょう。

Profile

くらしとお金のコンサルタント
髙橋 佳良子

お金のことだけでなく、その人らしさや心の持ち方などの重要性に気付き2015年に三世代充実生活研究所を設立。子どもから高齢者まで各世代への相談業務やセミナー講演会の講師を務めるファイナンシャル・プランナー(以下FP)。約30年のFP経験で、2,000回以上の講演会やセミナーを実施。日々お客さまからのご相談に真摯に取組み、不安や悩みを解決しています。

髙橋 佳良子氏のホームページはこちら
https://sansedai-oyakomago.jp/